東京地方裁判所 昭和23年(ワ)1493号 判決
原告 田辺正雄
被告 江澤謙二郎
一、主 文
被告は原告に対し、
東京都世田谷区新町一丁目百二十七番地の一、家屋番号同町二百八番
一、木造瓦葺平家居宅 一棟 建坪二十六坪
を明け渡すこと。
訴訟費用は、被告の負担とする。
この判決は、原告において、担保として金五万円を供託するときは、かりに執行することができる。
二、事 実
原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決及び担保を條件とする仮執行の宣言を求め、その請求原因をつぎのとおり述べた。
一 主文第一項中に表示の家屋は、もと訴外亡菊池勇之助の所有であつた。同人は、昭和十九年八月十七日に死亡し、その子訴外泰時、利男、富土子及び福三郎は、遺産相続によつてこの家屋の所有権を取得した。そうして原告は、昭和二十二年六月一日にこれをみぎ泰時ら四名から買い受け取得して同年八月二十三日にその登記手続を済ませた。
二 これより先、菊地勇之助の父政治郎は、勇之助の應召中その戰死を知らないで同人を代理して、昭和二十年五月二十九日に、被告に対し、本件家屋を毎月賃料金七十五円の約で期間の定めなく賃貸した。というのは、勇之助の戰死は漸く昭和二十一年九月十一日の戰死公報により家族に通知されたからである。
しかしながら政治郎が代理人として被告と本件家屋について賃貸借契約した当時みぎに述べた通り、既に本人勇之助は死亡していたのであるから政治郎にはその代理権がなく從つて政治郎と被告との賃貸借契約は政治郎の無権代理行爲によるものであつて無效である。また政治郎は勇之助の死亡を知らなかつたのであるから、もとより勇之助の遺産相続人である前示泰時等四名を代理していたものでもない。そうして被告はみぎに述べた政治郎との契約により本件家屋の使用を開始したものであるから、結局何等の正権原なく、泰時等四名及び同人等の承継人である原告所有の不動産を占拠するに過ぎないのである。
三 かりに前項の主張が理由なく、政治郎が被告とした契約が勇之助の相続人にその效力を及ぼし、延いて原告が本件家屋の買得によつて被告に対する賃貸人の地位を承継したものとしても、原告は被告に対し、昭和二十二年十月二十三日附の書面で右家屋の賃貸借の解約を申し入れ、その書面は同月二十九日、被告に到達している。そして原告はつぎに述べるように、みぎ申し入れについての正当理由を有するから、その後六月の法定期間を経過した昭和二十三年四月二十九日限り被告との賃貸借は終了している。原告は罹災後東京都の区内を去り、現肩書地に家屋を借り受け疎開した。その家族は母、妻、子供一人共計四人で、原告と同居している。原告は、毎日東京都千代田区神田の勤務先へ通勤するため、往復四時間以上を空費するので、現住居は余りにも不便であるばかりでなく、復員者である弟末吉夫婦の一家を收容するため(末吉は、その後死亡したので、今ではなおさら、その日常の世話をする必要が加わつた)自ら使用する必要があつて、本件家屋を買い受けたものである。しかもこれより先菊池政治郎は被告に對し昭和二十一年六月十一日に賃貸借の解約を申し入れると共に東京区裁判所に家屋明渡の訴を提起し同年十一月中被告との間に昭和二十二年五月末日限り、被告に於て本件家屋を明け渡す旨の裁判外の和解が成立しているので、安んじて本件家屋を買い受けたのである。
そうして本件家屋の間取りは八、六、五半、三、二疊の五室でありこゝに被告は男兒二人と女中とを住わせ、被告夫婦と娘二人とは、銀座六丁目の借家に住居している。このような家屋の使用方法は、前述の原告側の事情にかんがみて、原告のした解約の申し入れの正当性を裏ずけるものである。
これを要するに原告と被告との間には、賃貸借関係がないが、よしあつたとしても、既に終丁していることであるから、被告は本件家屋を明け渡す義務があるのに、原告の要求に應じないので本訴に及んだものである。なお被告の抗弁に對し政治郎が契約の当時死者であつた勇之助を代理するものとして被告とした本件賃貸借契約については、代理権消滅による表見代理(民法第百十二條)の規定は適用さるべきではない。
被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求めつぎのように答えた。
本件家屋がもと菊池勇之助の所有であつたこと、昭和二十年五月二十九日に、被告が勇之助の父で、且つ同人の代理人と称した菊池政治郎(当時、被告はもとより政治郎も勇之助の死亡を知らなかつた)から原告主張通りの約定で本件家屋を賃借りし、引続き家族と共にこれに(五室の間取りであることは爭わない)居住していること、原告がその主張の日に本件家屋の所有権移轉登記手続をしたこと並びに原告から昭和二十二年十月二十三日附書面で本件賃貸借について解約申し入れを受けたことは、いずれもこれを認める。
しかし被告の本件家屋の占拠が何等正当の権限によらないものであること、亡政治郎と被告との間に被告において本件家屋を明け渡す旨の裁判外の和解契約が成立したこと、並びに原告が解約申し入れについて正当の理由を有することはいずれもこれを否認する。その他の原告主張の事実は知らない。
抗弁としてつぎのやうに主張する。勇之助の出征後、その父政治郎は、孫である幼兒に代つて、菊池家の家事一切を仕切つて本件家屋の管理にも当つて來たのである。政治郎は、いわば菊池家といふ一種の財團の管理をしていたもので、勇之助又はその相続人のために、財産の管理に携わつていたのである。從つて政治郎と被告間の賃貸借契約当時、本人勇之助が死亡していたとしても本件契約の当事者は、これを知らなかつたのであるから本人の死亡に伴う政治郎の代理権の消滅は善意の第三者である被告に対抗することはできない。これを要するに政治郎の行爲が勇之助の死亡によつて無效になることはありえない。つぎに本件家屋の内、三疊は台所、二疊は玄関であつて住居に使用できるのは、他の三室に過ぎないところ、被告は職業上、荷物が多いので、その家族等七名(妻は稀に銀座の店舗内に留守番する)の居住には手狹である。
原告は被戰災を云々するが、被告も又その経営する工場と住宅とを戰災で失つたから、本件家屋を追いたてられては、他に安住の場所を有しない。賃貸人であつた菊池の一族は、本件家屋を原告に賣却したとしても、その際居住者である被告に一應の諒解を求めようともしていないし(他に高價で処分の下心があつたものと推察される)他方原告もまた、現住者のあることを知りながら買い入れて、直ちに被告に対して立退きを迫ることは共に経済上の利得又は出費の節約の目的に出て徒らに罪のない居住者の生活の安定を脅かすものに外ならない。かような事情のもとに於てなされた解約の申入れは法律にいわゆる「正当の事由」がないからその効力はない。これを要するに、原告の本訴請求原因はすべて失当である。<立証省略>
三、理 由
原告の主張する家屋がもと亡菊池勇之助の所有であつたこと、原告がその家屋を訴外菊池泰時外三名から昭和二十二年八月二十三日に賣買により取得した旨の登記を完了したことゝ、被告が現にみぎ家屋を占拠使用していること、並びに、被告の占拠の開始、昭和二十年五月二十九日に、訴外菊池勇之助の父政治郎が勇之助の代理名義において、(それが果して有效であるか否かの問題をさておき)被告との間に、賃料一ケ月金七十五円の約で、期間の定めなく賃貸借契約を結んだことを原因とすることは、当事者間に爭いがない。そうして、成立に爭いのない甲第一号証及び登記官署の作成部分の成立に爭いがないから、反証のない限り、全部眞正に成立したものと認める同第二号証を併せ考えれば、菊池勇之助は、昭和十九年八月十七日に死亡したため、遺産相続により、泰時等四名がこれを取得し、その後昭和二十二年六月一日に原告が同人等からこれを買い受け取得したことが明かである。
原告は、勇之助の父政治郎が、昭和二十年五月二十九日に被告とした賃貸借契約は、代理権のない者のした契約であるから、法律上無效である、と主張する。
さて、勇之助がこれより先、昭和十九年中に死亡していたことは、前段に認定したとおりであり、たゞ当事者間に爭いのないことは、契約の当時政治郎も被告も、勇之助が既に他界していたことを知らなかつた、ということである。してみれば勇之助の代理としてした政治郎の行爲は、当事者の善意悪意を問わず、本人勇之助のために法律上の効果を帰すべきでないことは勿論である。この点について、被告は、本人の死亡は善意の被告に対抗できない、と主張するけれども、民法第百十二條は、本人の死亡その他の事由による代理権の消滅に先だち、その適法の代理人との間に、取引(このときは、もとより、本人に対し、有效に法律效果が發生した)をしたことのある第三者がさらに、その代理人の代理権の消滅した後に、依然その者に代理権がある、と信じて、これと取引をしたというような場合に限つて適用される、と解釋することが相当であり、これに反して、契約当時單に本人の死亡を知らないために、政治郎に代理権があるものと誤信した、という本件の場合には適切でない。もつとも、前掲中第一号証及び証人竹内保子の証言、並びに、弁論の全趣旨をまとめて考えると、勇之助の應召後は、その老父政治郎、妻貞、幼兒四人が留守していたが、菊池家の家政は、戸主であつた政治郎によつて代表され、嫁して他家に在つた勇之助の妹保子がこれを輔けていたこと、並びに、被告は、竹内保子と姻族関係に在つたことが認められるから、被告はみぎ認定の菊池家の家庭事情をよく知つていたものと推認される。してみれば、勇之助所有名義の不動産の管理権が、同人の出征時に、父に対してされた委任による代理権(原告は、本件契約の当時において、政治郎に代理権はなかつた、と主張する理由として、專ら勇之助の死亡を挙げるから、かつては有效に代理権が成立したことをその主張の前提としていることが明らかといえよう)に基くものであり、且つ、被告がこれを知つて、代理権の成立及びその存続を肯定する立場において、本件契約の締結に及んだとしてもこの信頼(被告は代理権の消滅を知らず、または知らないことについての過失を問わるべくもなかつたことは、原告の自ら述べるとおり、勇之助の死亡は、遺族に対しても、漸く昭和二十一年九月十一日に、戰死公報によつて通告されたことから明かである)は特別に政治郎又は勇之助によつて、被告に対し作爲された結果ではないから、表見代理に関する法條を適用して、これを保護するに値する法律上正当の利益を有する場合と目することはできない。これを要するに、政治郎が勇之助と代理人と称してした被告との契約は、その効果を勇之助本人に帰せしめることはできないものと云わねばならぬ。從つて、被告が民法第百十二條を援いて、原告の主張を論難することは当らない。しかしながら、被告本人訊問の結果によつて明かな通り、被告は、契約の当時においては、係爭家屋の所有権が、勇之助の名義にあつたことさえ知らなかつた、ということであり、本訴においては、その父である政治郎を勇之助の代理人と信じて、賃貸借契約を結んだと主張するのである。そうして、前認定の家庭事情に照らし、政治郎は、勇之助から暗黙に不在中の代理権を與えられていたものと推認できるとしても、本件契約の当時において、既に代理権が消滅していたのであるから、結局、政治郎は、勇之助またはその相続人の代理権を証明することができなかつたので、自己を本人として被告と契約を結んだのと同様に、民法第百十七條による責を負うものといわねばならぬ(同條第二項の場合に当らないことは、さきに説いた被告の立場から明かである。)もつとも、前掲記のように、本件家屋の所有名義は、当時被告の認識の如何にかかわらず政治郎になくてもと勇之助、その死亡後は、その相続人の泰時らにあつたのであるが、債権契約としての賃貸借関係の成立には、賃貸人となる者が、所有権等の正権原を有することは必要でないから、政治郎が建物の所有権を有しなかつたことは、みぎ認定の妨げとなるものではない。
そうして、被告は、本訴においてはもとより、從前も、政治郎とした契約の効力を主張して、本件建物の占有を継続してきたことは、弁論の全趣旨により認められるのであるから、結局無権代理人である政治郎に対し、契約履行の責を求めているものといわざるを得ない。してみれば、原告が本訴において、政治郎のした行爲が何等法律上の効力がなかつた、との主張は到底これを許すべきではない。なお、原告は、本件賃貸借契約は、昭和二十一年十一月中、合意解除された旨を事情として主張するが、(ここまでの確たる意思の合致は、後に触れるとおり肯定しがたい。)それは原告の主張によつて明かな通り、勇之助の死亡の事実が政治郎等遺族に知れた後のことであるから、前認定のとおり、政治郎のした行爲の効力を事実として否定できない以上は、政治郎が被告に対して履行し來つた賃貸借関係が、暗黙に、勇之助の相続人等と被告との間に、承認されたことを自白するものというべく且つそれは、政治郎の死亡(原告本人訊問の結果によると、昭和二十二年七月頃死亡)後は、泰時等四名と被告との間に承継されたものと認めざるを得ないのであつて、結局原告主張の請求原因の第一は、これを肯定することができない。
つぎに原告が、被告に対し、昭和二十二年十月二十三日附の書面で賃貸借の解約を申し入れたことは、当事者間に爭いがない。原告は解約の申し入れをするについて正当の事由がある、と主張するから、以下この点について判断する。原告本人訊問の結果によると、原告の現在の生活環境、職業事情、その家庭及び親族関係等については、原告主張のとおりの事情を認定することができるから、原告が都の区内に住家を欲しており、且つその必要の程度の高いことは、十分これを察することができるし、また本件建物の買入れの動機も、專らその目的に出たことは、その供述によつて明かである。しかし他面被告本人訊問の結果によると、被告もまた、原告と同様に罹災者であつて、本件家屋の外には、店舗(これも借家)はあつても、他に安住の住家を有しない、ということである。してみれば、住家を必要とする、という一点においては、原告も、被告も、その緊迫度は、五十歩百歩であつて、前認定のように昭和二十二年以降の所有者である原告の利害と、昭和二十年中からの居住者である被告のそれと、そのいずれを重しとすべきかは、にわかに判定できないものがある。
しかるに、成立に爭いのない甲第三号証の一、証人浅沼澄次の証言、同証言によつて原本の存在及びその成立の眞正を認める同第三号証の二、並びに原告及び被告各本人訊問の結果をまとめて考えると、原告がこの家屋を買い受けるに至るまでの事情として、さらに、次のような経過を認定することができる。
すなわち、本件家屋を事実上管理していた菊池政治郎は、昭和二十一年六月中に、勇之助代理名義において、被告を相手取り勇之助が外地から復員するときは、その住居は手狹となるから、被告居住の本件家屋を自家用に使用の必要がある、という理由で、東京区裁判所に解約申し入れによる明け渡し請求の訴を提起した。この訴は、後にこれを取り下げたが、政治郎は、さらにその後勇之助の戰死が公報によつて確認された後、みぎの訴訟における被告代理入の弁護士浅沼澄次に対して、裁判外で被告の明け渡しを求める趣旨の交渉をした。
当時の政治郎は、勇之助の戰死にいたく心を痛めており、老体且つ病苦を押して、再三浅沼を訪ね、その交渉の斡旋を依頼したため、明渡の交渉は、政治郎に対する同情を背景として行われた。從つて、被告もむげにその要求を却けることのできにくかつた義理合いがあり、且つこれに先だつ訴訟の代理人であつた浅沼の勸告もあつたために、昭和二十年十一月頃に浅沼を介して政治郎に対し、半年ぐらい明け渡しを待つて貰いたい旨を傳えさせた。なおその頃被告は、賃料を値上げしてもよい旨を洩らして、賃貸借の継続を希望したが、そうした方法でこれを続けることは、政治郎において賛成せず、政治郎は、被告の言明に期待と信頼とをつないで、こうした経過を原告に告げて、本件家屋を買り渡すに至つたものである。被告は、その本人訊問において、政治郎との間に、昭和二十二年五月末日限り本件家屋を明け渡す旨の確約をしたことを否認するけれども、政治郎に対し、明け渡しを半年ぐらい待つて貰いたい旨を述べたことは、あえてこれを否定しない。ただそれは、政治郎を安心させるためのいわば氣休めであつて、当時他に移轉のできる確実の目算もなかつた、と弁解する。しかし、かような内心の意思の留保は、相手方である政治郎がこれを知つていたかまたは知ることのできたことの立証のない限り、表示された行爲の効力を妨げることはできないし、被告の言明を傳え聞いてこれを信ずる善意の原告に対しては、その弁解の趣旨を対抗することはできないものといわねばならない。また被告は、原告による本件家屋の買い取りを事前に何人からも知らされず、政治郎に対する言葉を言質として原告によつて援用されることについて、あきたらないものがあるようである。そうして、証人浅沼澄次の証言によれば、政治郎から被告に対する明け渡しの交渉の当時においては政治郎において、未だ特定の他人に家屋を賣却することのできる目当てがなかつたのか、または少くとも、これを秘しておつたのか(原告主張の本件家屋の賣買契約の成立との間には、約半年の開きがある。)ともかくそのような方針は、交渉に際し明示されていなかつたことは、事実である。しかしまた、被告本人訊問の結果によれば、これより先、政治郎から被告に対し、家屋の買い取りを求める交渉があつて、被告は、これに應じなかつた、ということであり、また前認定のとおり、勇之助の無事帰還の望みの絶えていたことは、既に関係者に知れており、從つて政治郎から被告に対する訴の理由中に述べるところの自家使用の必要はないのであり、菊池家の事情に精しい筈の被告としては、政治郎の被告に対する明け渡し交渉の眞意が奈辺に存したか、從つてその際における被告の言明がどんな反響を持つかを十分覚悟していたに相違ないと推認される。そうして勇之助の亡い後、遺族として残された老人と婦女子が、勇之助の遺産である本件家屋を原告に買却する途を選んだのは、菊池一家の家計を維持するため、やむを得ない処置であつたと推認されるから、被告の言明を信じてされた本件家屋の賣買を被告の主張するように不純なものと認めることは相当ではない。
ただこの賣買において、政治郎または原告のいずれからでも、たとい儀礼としてでも、被告に一應これを告げて諒解を求める労に出なかつたことは、信義則によつて律するを旨とする賃貸借関係において、殊に前認定のように、被告が菊池一家の事情に同情して自発的に明け渡しに協力しようとしたと見られる本件においては、賃貸人の側における手落ちであることは、これを否めない。さりとて、こうした手落ちは、なお被告のした前示言明の効果を全く抹殺し去るに足るものと認めることはできない。これを要するにさきに認定したような、原告において本件家屋を買い取るに至つた事情と、原告の直面する住宅事情とを併せ考えるとき、原告のした賃貸借の解約申し入れは、法律にいわゆる正当の事由を具備したものと認定することが相当である。
以上説明したとおりであるから、原告主張の第一の請求原因は理由がないけれども、結局係爭賃貸関係は、原告のした解約の申し入れによつて、その意思表示が、昭和二十二年十月二十九日に被告に到達したことは、当事者間に爭いがないから、その後法定の六ケ月を経過した昭和二十三年四月二十九日限り、終了したものと認むべきである。よつて、みぎ賃貸借の終了を原因として被告に対し、本件家屋の明け渡しを求める本訴請求は正当であるから、これを許すこととし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條を、担保を條件とする仮執行の宣言につき同法第百九十六條を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 中西彦二郎)